2017年5月7日日曜日

せり上がる天空の田面を見下ろせば、長きにわたり守り続けている方々に畏敬の念を覚えずにはいられない - 千枚田(中山の棚田)(小豆島町・中山)

中山の千枚田(棚田)

”きょうはてっさやな”って、親切に車に乗せてくれたおじさんが話してくれます。
何でも、本命のカレイに、そろそろ時期の来たキスを狙っていたんだそうです。

車にあった二本の釣竿や、それにぶら下がった仕掛けから、船釣り用みたい。
ところが、本命は外れてショウサイフグの二匹だけで、お刺身にしたいようです。

それで、”てっさ”といったのでしょうが、これは西日本で使われる秘密の合言葉。
河豚は毒があるので、当たれば必ず死ぬことから、鉄砲になぞらえた食材です。

つまり、免状を持たない素人の調理は危険なので、大っぴらには言えません。
このため、てっぽうの刺身を省略して、”てっさ”という隠語が生まれたようです。

関西でよく使われる言葉ですが、小豆島に来たんだなあと実感いたしました。
それで、乗せてもらった車は、生活の足代わりになる軽のワンボックスカーです。

小豆島は、バスの運行本数に限りがあって、山間部に入ると不便になります。
自分等は、中山の千枚田を目指しましたが、バスは一日数本だけなのです。

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だって、周辺は田んぼ以外の見所もないし、バスも不便となれば致し方ない。
そこで、お昼過ぎに到着した関係で、午後は棚田一本に絞ることにしました。

庄土港ターミナルのうどん屋でアドバイスしてもらい、先ず途中まではバスです。
次に、小豆町の中央病院で下車して、てくてくと坂道を登っているところでした。

九十九折で坂も急になったので、一休みしていたら、車が止まってくれました。
おじさんによれば、イノシシが道路によく出るので、危険だから乗れといいます。

何台もの車と衝突した事故が起きているので、物騒だし登坂はつらいだろう。
おじさんも、我々が棚田を目指していると、察しが着いたようで誘ってくれました。

そして、地区の入口まで好意で送っていただきましたが、三十分の短縮です。
助かったと思いつつ、体力を温存できたので、棚田の最上部にチャレンジします。

これが細いながらも、整備された農道とはいえ、傾斜がきつくて結構つらかった。
しかも、途中には動物よけの柵があって、簡単なスライド錠で開け閉めをします。

湯船山蓮花寺付近より

そうしないと、大事な稲が、イノシシやシカの食害にあって台無しになってしまう。
一昨年は、被害対策で二千頭近くも捕獲処分されたようですが、驚きました。

備前も讃岐の国もはるか海の向こうで、泳いで渡って来て繁殖したと言うのか。
こうして、棚田をめぐる島の事情も色々とが分かって来て、興味は尽きません。

ところで、棚田の鑑賞には、予備知識があるなしで、印象が大きく異なります。
県道より殿川の谷に向かって棚田もありますが、高低差も少なくて普通です。

これだけを見てしまえば、これが千枚田と呼ばれる理由が分からなくなりますな。
でも、千枚の真贋は、山の上の蓮花寺まで登り詰めないと分からないのです。

急な傾斜は標高差で百メーターもあり、コンクリート農道にしたところで厳しい。
ですが、登ってみて初めて、棚田の全体像がつかめるようになる規模なのです。

だから、旅行サイトで見られる評価の低い投稿は、努力を怠ったのかもしれず。
折角行ったのに、ちょっとの情報不足で、絶景を見損なったのは残念でしょうな。

というわけで、いくつか棚田を見てきた中で、この中山は必見の価値があります。
標高差と傾斜の激しさゆえに、階段耕作によって“耕して天に至る”景観が出現する分けでして、しかも、名水百選に選ばれた"湯船の水”を引いた田んぼには、コシヒカリが作付けされているという、景色よし味よしの美田とも言えるのではないかと、思うのでした。


おまけ:
姨捨の棚田は傾斜がゆるいな


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